袴田京太朗(1963年静岡県生まれ・川崎市在住)は、現在最も注目を集める彫刻家のひとりです。1980年代後半から活動をはじめ、その斬新な作品のスタイルはそれまでの彫刻の概念を覆すものとして大きな注目を集めました。スタイルと共に使われる素材もまたユニークです。ベニヤ板やビニールシート、机やタンスといった既成の家具や電気コードなどを用いて、思いもよらぬ作品を作り出しており、ときにダイナミックで、またユーモラスでもあり謎に満ちた不思議な「彫刻」となっています。見る者を困惑させ、魅了する作品の根底には、袴田が絶えず「彫刻とは何か」を自問し、「彫刻はその表面と不可視の内部との対立関係によって成立している」との認識があります。これにより、あくまでも彫刻にこだわりながら、彫刻の本質を問い続け、核心を掘り下げることで新たな彫刻の在り様を提示することとなります。
近年の作品では何色もの色鮮やかなアクリル板を積み重ね、フィギュラティブなかたちが作られています。カラフルで一見ポップな雰囲気を持つこの作品群も、可視と不可視、虚と実を併せ持つ袴田ならではの「彫刻」であるといえるでしょう。
今回の展覧会では、こうした彫刻への独自のアプローチをみせる袴田の作品世界を新作・近作を中心に各年代の作品も交えて紹介するものです。