いつかどこかで見たような、なつかしくて不思議な風景―。
銅版画家、南桂子(1911-2004)の展覧会です。
女学校時代から絵画や詩作をたしなみ、溢れる創造力を油彩、短歌、詩、童話の世界に向けた南は、浜口陽三と出会ったことをきっかけに、本格的に銅版画家として歩みはじめました。1954年、43歳の時にパリに渡り、沢山の作品を生み出しました。
お城、樹、鳥、少女。繰り返し登場する童話のようなモチーフは淡々として静かな佇まいですが、作品のひとつひとつに憧れや、喜びや、せつなさなどが表現されています。近年、世代やジャンルを超えて多くの方の支持を得ているのは、そこに包み込まれてしまうような“心地よさ”があるからなのかもしれません。
本展では3月に筑摩書房より出版される『船の旅 詩と童話と銅版画 南桂子の世界』に掲載された作品を中心に展示します。銅版画約50点をはじめ、初公開のペン画を含む小作品、スケッチブックに残されたユニークなドローイングの数々も紹介します。洗練された銅版画と共に、創造の源泉にある南桂子の豊かな感性を発見してください。