藤本能道 (よしみち)(1919~1992)は、近現代の作陶家として大きな足跡を残した富本憲吉(1886~1963)と加藤土師萌 (はじめ)(1900~1968)に師事し、その色絵磁器の系譜を継ぎつつも独自の技と作風を追求して、20世紀の日本陶磁に新たな色絵表現を切り開いた陶芸家です。藤本は、従来の日本の色絵にはなかった中間色の絵具を積極的に採用し、白磁の素地自体に釉薬の色を重ね、絵画のような繊細な色調と柔らかな質感表現を色絵にもたらす「釉描 (ゆうびょう)」の技を極めるなど、技術研究と実践により多くの優れた作品を生みだし、1986年には重要無形文化財「色絵磁器」保持者に認定されています。
当館の創立者、菊池智は作家と親交を深める中で、その色絵の美しさに魅了され、作品の蒐集を続けてきました。本展では、菊池コレクションより色絵の初期から最晩年にかけての代表作を選び、藤本能道の作陶の軌跡と色絵表現の深まりをご覧いただきます。藤本の作品が放つ、瑞々しい色彩と情感溢れる色絵の世界をお楽しみください。