岩崎貴宏は、歴史的な建築を地上の実像と水面に映った虚像を一体化し、変容させながら、空間感覚を揺さぶる《リフレクション・モデル》のシリーズや日常品から鉄塔など構造物を作り出す《アウト・オブ・ディスオーダー》のシリーズを制作しています。
今回の展示は川崎市をモチーフにした《アウト・オブ・ディスオーダー》の新作となりますが、このシリーズは大規模な展示とは反対に、その小ささ故に見る人に驚きを与え、展示空間に一緒にいる人に目配せしたり、ツイッターやフェイスブックなどで、見ていない人たちに知らせたくなる作品なのです。近年、台中ビエンナーレ(2013年)やインド(2014年)での展示など、海外での発表が目立つのも、その表現に誰もが作品と接する喜びを素直に感じられるからでしょう。
川崎市には工業立国であった日本を支えた臨海部、現在、大規模な再開発地域が進む武蔵小杉など、それぞれの地域に時代の変化を象徴する構築物を見ることができます。岩崎貴宏は川崎の風景とこうした変化にご自身の原風景を重ね合わせていましたが、今回の新作も私たちに2014年という時代の新たな一側面を発見させてくれるでしょう。