和鉄でつくった日本刀には、刀紋の中に沸 (にえ) や匂 (におい)、移り (うつり) や地景 (ちけい) など、表面に美しい模様が現れます。
しかし現代の鋼では、この和鉄特有の趣を醸し出すことはできません。
また和鉄は現代の鋼に比べて、さびにくい特性があります。
鍛冶作業では簡単に鉄と鉄が鍛接でき、炭素濃度が高いにもかかわらず、餅のような柔らかい粘りのある鋼を生み出すことが出来ます。
この和鉄の不思議な性質はなぜ生じるのでしょうか。
私は三十五年間、和鉄の世界を探求してきました。
本展では、その研究成果の集大成として、和鉄の神秘を解き明かします。永田和宏