ヨーロッパで初めて硬質磁器の焼成に成功したドイツのマイセン磁器製作所は, 1710年の創業より300年を超える歴史の中で, 食器はもとより数多くの魅力的な作品を生み出してきました。なかでも人物をかたどったフィギュリン(彫像)は, 絵師としてマイセンの絵付を完成させたヨハン・グレゴリウス・ヘロルトや, 優れた彫刻家で原型制作師のヨハン・ヨアヒム・ケンドラーらの登場により, ヨーロッパにおける磁器彫像 (人形) 製作の先駆的な存在となりました。それらは, プロイセンのフリードリヒ大王やロシアのエカテリーナ二世をはじめとするヨーロッパの王侯貴族たちを魅了し, 製作所には注文が殺到するようになります。権力者たちの特別な発注は, 技術力や芸術性の向上に寄与することともなり, マイセンは, ヨーロッパにおける磁器製造のパイオニアとしてその名を広くとどろかせ, 他窯にも多大な影響を与えていきました。
本展は、小早川春信氏より岐阜県現代陶芸美術館蔵館に寄贈された19世紀のマイセン人形を中心とする約100点のコレクションによって、その魅力に迫ろうとするものです。19世紀のマイセン磁器製作所は、過去の様式を復刻したため、当時つくられた人形はマイセンを代表する彫像家が活躍した黄金期の雰囲気を湛え, なおかつ19世紀ならではの明るく鮮やかな色彩が特徴です。様々な寓意を秘めた男女の語らいや, あどけない子供をかたどった人形たち, そして豪華なディナーセットなど, その優雅で愛らしい世界をお楽しみください。