梅は、松竹梅の一つとして、日本をはじめとする東アジア全般で古来より親しまれてきた身近な花です。まだ寒い時期にひときわ香り高く清楚な花をつける梅。百花にさきがけて咲く姿は、再生、延命という吉祥の象徴とみなされ、また厳しい環境に耐える姿は、高潔を保つ文人の理想とされました。さらに咲き競う艶麗な姿は、愛の交歓や美女の象徴にもなるなど、人々は梅の花や枝振り、果実にまで様々な思いや理想を託してきました。こうした豊かなイメージを反映して、美術作品の中にも様々な形で梅が表現されています。墨梅と呼ばれる墨一色で清廉に描かれた梅、月明かりに照らされて妖艶な姿態を見せる梅、淡麗な色合いで、春の訪れを予感させる紅白の梅、さらには花瓶や皿、文房具などの器物をさりげなく飾る梅やデザインとして意匠された梅など、その姿は大変変化に富んでいます。
本展では、黒川古文化研究所、大和文華館との連携により様々な表情を見せる梅の世界を絵画、工芸の諸作品から、多角的にご紹介します。人々が様々な想いをよせた豊穣な梅の世界をお楽しみ下さい。
3館連携「松・竹・梅」展の開催にあたって
松竹梅は、縁起のよい植物として現在でも広く親しまれています。もともとは、冬の寒さに耐えて緑を保つ、あるいは花を咲かせることから、中国において高潔さの象徴とされ、宋代以降は「歳寒三友」とも称されて、次第に吉祥のイメージが強まっていきました。ただ、そこに表された意味や由来を探っていくと、より多彩な世界があることに気づかされます。
このたび、黒川古文化研究所・大和文華館・泉屋博古館は、各館が松・竹・梅を一つずつ受け持つ連携展を企画しました。相互に借用を行って、日本・中国・朝鮮半島の絵画・鏡・漆器・陶磁器・文房具・刀装具など様々な作品を陳列します。
早春から新緑へ向う季節、奈良・京都・西宮と会場を巡っていただき、それぞれのモチーフの特質をとらえた先人たちの美意識と、その背後に込められた豊かな精神をご堪能ください。
特別企画展 竹の美
大和文華館
会期/2014年2月21日(金)~3月30日(日)
休館日/月曜日
開館時間/午前10時~午後5時(入館は午後4時まで)
入館料/一般 600円、高校・大学生 400円、小学・中学生 無料
TEL/0742-45-0544
住所/奈良市学園南1-11-6
http://www.kintetsu.jp/yamato
第111回展観 松―美と徳の造形―
黒川古文化研究所
会期/2014年4月19日(土)~5月18日(日)
休館日/毎週月曜日(ただし5月5日(月・祝)は開館し、7日(水)は休館)
開館時間/午前10時~午後4時
入館料/一般 500円、高校・大学生 300円、小学・中学生 無料
TEL/0798-71-1205
住所/ 西宮市苦楽園三番町14-50
http://www.kurokawa-institute.or.jp