日本の写真を開拓した下岡蓮杖 (しもおかれんじょう)(1823~1914)は、絵師・狩野董川 (かのうとうせん) 門下の生活で写真と出会い、写真師となりました。「蓮杖」の名は師の「董(蓮根の意)」に由来します。ここから写真師・蓮杖の土台が絵師としての誇りだったと読みとれます。苦心の末、写真術を獲得し横浜で隆盛を極めますが、妻の死を期に絵師へと戻ります。晩年の絵画作品には「写真元祖」の印を用いており、写真と絵画の往来が蓮杖の礎となったのです。本展は、最も体系的に記された口述筆記である『写真事歴』(山口才一郎筆記、明治27年、写真新報社)を軸に、写真・絵画・工芸品などの実作品と資料によって、日本の初期写真史において最も重要な写真師の一人である下岡蓮杖を振り返る大回顧展です。