根付 (ねつけ) は, 印籠や煙草入れなどを帯から提げる際に, 紐の端に付けた小さな留め具です。はじめは簡素なものでしたが, 江戸時代になり, 町人文化の成熟とともに, 装飾性や芸術性が重視されるようになりました。古根付と呼ばれるこうした古い根付は, 文化・文政年間(1804-1830)に最盛期を迎えます。根付師たちは, 象牙, 鹿角 (かづの), 黄楊 (つげ), 黒檀 (こくたん), 琥珀 (こはく), 珊瑚, 金属, 漆, 陶磁器などさまざまな素材を用い, 蒔絵 (まきえ) や象嵌 (ぞうがん) などの技を競って, 多くの名品を生み出しました。
明治時代に入り, 洋服文化が定着して根付の需要が急速に減少する一方, 海外ではその高い芸術性が評価されるようになりました。戦後, 伝統を継承しつつも現代的な感覚で作られた根付は現代根付と呼ばれ, 斬新でひねりの利いたデザインが特徴です。最近では, 多種多様な素材の活用と, 外国人アーティストの参入により, 再び活発な活動を見せています。
本展では, 世界有数の根付コレクターである高円宮殿下が, 妃殿下とともに収集された根付コレクションの中から, 印籠や緒締 (おじめ) を含むおよそ500点を展示します。また, 両殿下が宮中儀式でお召しになったご装束のほか, 楽器やカメラ等のご愛用品もあわせて紹介します。
根付とは…
和服を着ていた時代の人々は, 日常に用いる小物や貴重品を帯から提げて携行していました。これらが帯から抜け落ちるのを防ぐために使われたのが「根付」です。帯の上で目立つ存在である根付は, 意匠に凝った立体的な細工がほどこされ, お洒落な人々の身辺を飾る装飾工芸品となっていきました。携帯電話を飾るストラップの起源は, 根付にあるとも言われています。