「ア・ターブル(À TABLE)!」とは、「ごはんだよ!」と、食事の準備ができたことを知らせ、家族を食卓へと集めるフランス語のかけ声です。本展は、このかけ声の下、誰もが親しみやすい食べ物と食事にまつわる様々な造形作品を集めて展覧し、食をめぐる美術の多様な世界を紹介します。
食べ物や食事は、触覚や味覚といった感覚と密接に結びついており、元来、視覚によって享受されるべき美術の世界とは相いれないものかもしれません。しかしながら、食は私たちが生きていく上での根源であり、食卓を囲むことで生まれる関係は社会の基盤とも言えるものです。食は、世界各地でその地域固有の文化アイデンティティを形成する一方で、異国や別世界への夢や幻想において重要な役割を果たします。さらに、消費の対象であるはずの食品は、作品として表現されることで新たな意味を帯びるとともに、美術のあり方自体を問い直す契機ともなってきました。このように、食べ物や食事と関わる造形作品を見ることは、私たち人間や社会について考えることに直結しています。
本展は、厨房、食卓、夢の中、そして美術館という場をキーワードとする4つの章から構成されます。私たちの生活における食事、そして食を通して見た美術について改めて問いかけつつ、食をめぐる多彩な表現の世界へとみなさまをお誘いいたします。