清川泰次(1919-2000)のアトリエ兼自宅を一部改装し、2003年に世田谷美術館分館として開設した清川泰次記念ギャラリーは、今年開館10年目を迎えました。そこで今年度は「清川泰次の世界」と題し、清川泰次の足跡を3期に分けて紹介します。Ⅰ期展では、若き日の具象的なモチーフが描かれた作品から、抽象絵画の潮流の中心となっていたアメリカへ1951年に渡った頃までの作品を紹介しました。続くⅡ期展では、帰国後、日本で精力的に制作活動を続けた後、再びアメリカの3年間滞在して現地の画廊などで作品を発表し、その後<白の世界>のシリーズへと展開していった時代に焦点をあてました。
Ⅲ期となる本展では、絵画だけではない、清川泰次が取り組んだ様々なジャンルの仕事を紹介します。独自の抽象的な表現世界を築いた清川泰次は、絵画だけにとどまらず、立体造形や日常生活を彩る様々な場面へと創作の領域を広げていきました。リズミカルな線や、色彩によってデザインされたテキスタイルは、クッションやスリッパなどの日用品に使われ、モダンなライフ・スタイルのアクセントとして、豊かな生活環境を生みだしました。生活全体を「美」で満たすことを目指した清川泰次の創作活動を、彼の絵画作品や立体作品など約20点も加え、ご紹介します。