医療用の包帯を水に溶けた石膏に浸し、モデルの身体にじかに貼り付ける。
そして、ただ待つこと―。
これがシーガルの方法である。モデルの皮膚の襞のみならず、もしかすると、息遣いまでもが固く封じ込められたかのような白い彫刻は、こうして静かに、わたしたちの世界に参入する。
シーガルは2000年6月、この世を去った。シーガルの協力を得て生前から企画されていた本展は、だから予期せぬかたちで没後最初の回顧展となった。
これまで、シーガルの絵画はあまり紹介されることはなかった。しかし彫刻家としての名声の裏には、そもそも画家を志していたシーガルの、生涯にわたって継続された何枚もの絵が横たわっている。本展は、そのようなシーガルの影の部分である油彩画やパステル画に始まり、部屋の片隅にそっと取り置かれた彫刻の断片、もちろん何体もの彫刻で構成される情景としての作品を含め、全98点でシーガルの全体像を探る。出品作品はすべて、シーガルの制作スタジオに遺されたものである。