バレエは、ルネサンス期のイタリア貴族の宴での踊りから始まったとされています。それをフランスへ持ち込み、流行らせたのがフランス王アンリ2世の妃となったメディチ家の娘カトリーヌ・ド・メディシスで、バレエはフランス宮廷において盛んになりました。
17世紀に即位したルイ14世は、バレエに熱中して自らダンサーとして出演し、ちょうど300年前の1713年、質の向上を目指してバレエ学校を設立しました。
ロマンティック・バレエが成立したのは、フランス革命後の最も不安定な時代でした。1830年七月革命と1848年二月革命の間の約20年間が黄金期となります。
テーマは、当時のロマン主義文学と深いかかわりを持ち、物語の舞台は異界や異国といった場所が設定されました。特に、幻想的な異界の場面では妖精が杜役となり、神秘的なイメージをより印象付けるため、ロマンティック・チュチュと呼ばれる釣鐘型のふわふわした衣装が考案されて、つま先による踊りが発達しました。『ラ・シルフィード」、「ジゼル」、「コッペリア」といった、今日も踊り続けられている名作も多数生みだされ、現在知られるバレエの原型を作った時代と言えるのです。いずれもバレリーナが中心の作品であることからも分かるように、女性ダンサーの第一黄金時代でもありました。
バレリーナの中でも、特に人気を二分した二人のスターがいます。麦畑を一本の麦も折らずに歩けたとまで謳われた天上的な魅力のマリー・タリオーニと情熱的で地上的な踊りで男性ファンを魅了したファニー・エルスラーです。
本展では、この二人のバレリーナを中心に、当時人気のあった演目ごとに版画、スターの手紙、楽譜等をご覧いただくことによって、時代背景を含めたバレエの成り立ちを確認し、ロマンティック・バレエという夢の世界をお楽しみいただきます。