江戸時代の中頃、文人画が我が国の画壇の中で隆盛を極めるなか、多くの画家たちは自身が目指した境地の一つである真の山水表現を習得するために数々の試行錯誤を繰り返しながら、先人の画や画法を模倣することからやがては実際に見る事のできない景色や場面に対するあこがれや想いを形にすることが好んで行われるようになりました。
このような「写意」の表現は文人画家が目指した「気韻生動」の表出に最も適した方法として重要視され、実景を取り入れた「写実」という描き方が行われるようになってからは、この「写意」を込めた実景の図は「真景図」と呼ばれ、先人の模倣だけでは到達することのできない真の山水図を描く方法として確立されていきました。本展覧会では、当館の文人画コレクションによって江戸期の画人たちが風景を描くために特に重要視していた「写意」の表現とは何かを紹介します。