O JUN (おう・じゅん 1956年東京武蔵野市生まれ) は、東京芸術大学で油画を学んだ後、スペイン、ドイツに遊学し、1980年代にパフォーマンスやオブジェを、1990年代は紙にアクリル絵具、クレヨン等による絵画を、2000年代以降は油画も並行して制作、発表してきました。一貫して具象的なイメージを描き続けたこの30年の歩みは、近年ますます重みを増し、後進の画家たちに多大な影響を与えてきています。
O JUNは2008年に当館で公開制作を行い、華麗な絵画術を披露すると同時に、迫力のパフォーマンスで来館者を圧倒。気さくでユーモア溢れる人柄に、多くの人が魅了されました。この時に生まれた関係が育って、今回の個展開催という実を結びました。O JUNは幼少期に西東京市 (旧保谷市) に移り、現在まで同地にアトリエを構える、多摩ゆかりの画家でもあります。東京郊外の生活者としての画家が捉えた情景は、府中市美術館でこそ、展示する意義が大いにあります。
O JUNの描く、事件や物語の断片のような場面は、見る者の不安と好奇心をかき立てます。現代的に思い切りよく引かれた線と余白の境界に、不条理の世界が見え隠れするからです。深層心理に深く切り込むその骨太のイメージは、不確かで閉塞する現代日本に生きる私たちに、たくましい想像の力と勇気を届けてくれるのです。
2011年末から描きためた新作約40点を含め、これまでの代表作約140点によって、O JUNの画業を振り返り、近代を背負い現代の物語と絵画を探求する偉才の世界を紹介します。