生井亮司(1974年-)は、奈良時代の仏像にその発祥をもつ乾漆技法で創作をしている小山市在住の彫刻家です。本展は、2009年第83回国展彫刻部門最高賞の国画賞受賞、2012年国画会会員となり注目を集めている生井の小山での初の個展となります。
生井は2005年以降、伝統的な彫刻技法の中でも自由な造形が可能で、また独特の滑らかで柔らかな質感をもつ乾漆という素材にひかれ、その特長を生かした人物像の創作に取り組んできました。作品は静謐なたたずまいの中にゆるやかにカーブするフォルムが生み出すリズムをひそめて、素材にマッチした優美な空間をつくりだしています。一方で物を作ることで人がどのように成長するのかを問う美術教育の研究も重ねており、多元的にこころとかたちの関係を追求している特徴ある作家の一人です。本展では、人のアイデンティティが形成される少年期をテーマとした「少年の詩学」シリーズを中心に2006年以降の近作を紹介いたします。乾漆という伝統的な素材を用いて人のこころとかたちを表現する、物静かで繊細な造形性との出会いを体験していただきたいと思います。