JR静岡駅前にある静岡市美術館は、誰もが気軽に立ち寄れる“街のなかの広場”のような美術館を目指しています。Shizubi Projectでは、多くの人が行きかうエントランスホールの開放的な空間を活かして、現代のさまざまな美術の姿をご紹介します。
第3回目となる今回は、美術家・今村源 (1957~) を取り上げます。
今村は、針金や紙などおよそ彫刻らしからぬ素材で、浮遊感溢れる「彫刻」を作って来ました。それどころか、椅子や机、バケツや冷蔵庫など身近な日用品も、一見ささやかに、しかし驚くほど精緻に手を加えられ、魔法をかけられて作品世界に登場します。
今村はまた、森の地下に菌糸を張り巡らし、ときおり地上に姿を顕す「キノコ」の世界に、深い関心を寄せてきました。私たちには見えない世界で、しかし確実に世界と共生し、世界を支えている「キノコ」。そんな「キノコ」の姿に、今村の思索は、私 (個) を超えて連綿と続く生命の営みにまで広がります。
キノコ、わたし、そして魔法をかけられ「伸びやかな物質の夢」にみちた日用品たちが、天井高6mのエントランスホールに浮遊し、共生する世界をお楽しみください。