いま美術に取り組む人たちは, 何を懸けるように求められているのでしょうか。倫理的使命感を持つこと, 社会において具体的なアクションを起こすこと, あるいは人々にとっての記憶装置となるべく作品を作ること。私たちは, 何かしらの必然性や目的ありきの活動, 答えのある作品を求める傾向にあるようにも思われます。
しかし, ともするとこうした求めに距離を置いているかのように見える作品が, そのことによってかえって現実社会の枠組みから私たちの思考を大きく飛躍させ, また世界を押し広げてくれるような豊かな力を有することがあります。それはしばしば, 大真面目な態度から生じるユーモアを伴っており, ユーモアを装うことで, 軽やかな世界に飛び越え, またぞっとするような世界の深淵に接近していたりします。
本展では, こうした「ユーモア」を軸に, 池田晶紀, 泉太郎, 小林耕平, D.D., 長谷川繁, 花岡伸宏, 八木良太の7組の作品をご紹介します。
作家たちの作品を前に, 私たちもまた, ユーモアを持ち, 受け止める度量が試されるかも知れません。しかし, このユーモアがもたらす笑いと閃き, 逡巡と違和の感覚は, 世界の広がりと深さを私たちに感じさせ, 「ここ」の先にある「そこ」に, 私たちを触れさせてくれることと思います。