紙は、身近な造形素材の一つです。豊富な種類、特性や表情、その可能性は、美術、建築、デザインなど、幅広い分野で作り手たちの創造力を刺激し続けています。
当館は、素材に目を向けた展覧会やワークショップを数多く開催してきました。本展は、1990年に開催した「PAPIER : 紙物語―美しく繊細な造形」展以来、ふたたび、素材としての紙に焦点をあてます。
素材としての紙の魅力が、アートやデザインの手法で、鮮やかに引き出された作品に着目しました。そこには、手のわざだけでなく、印刷や加工という確かな技術力が関わってくることも見逃せません。
本展で紹介する作品は、造形的な美しさがあるだけでなく、紙本来の性質をしっかり示しながらも、より親密に私たちに働きかけてくる‘何か’が感じられます。紙と私たちの新しい関わりかたを示してくれてもいるでしょう。
本展が、今日の私たちと紙との関係性を探るひとつの試みの場となると同時に、これからの紙と私たちのあり方を考えていくきっかけのひとつになれば幸いです。