古来より、動物は絵画や彫刻などのモチーフとして様々な場面で表現されてきました。私たちは、命ある“生き物”たちに時に魅了され、時に畏敬の念を抱いてきました。日本においては鳥や動物といった絵画の主題を早くから確立し、毛描きや垂らし込みといった技法も取り入れてきました。
江戸時代後期に活躍した森狙仙は動物画を得意とし、とりわけ猿画の名人と称されました。繊細な毛描きを駆使して制作された「岩上双猿図」では、猿の毛並みが見事なまでに表現されています。また、鼠を描かせれば天下一と称された白井直賢の「枇杷にねずみ図」では、二匹の鼠が細部まで正確に描写されており、そのデッサン力の高さがうかがえます。さらに、明治時代、欧米に日本茶を輸出する際につけられた商標ラベル蘭字では、様々な動物たちがデザインされ、それが日本茶の売り込みに一役買いました。
本展覧会では、江戸時代から現代に至るまでに描かれた動物たちの世界をご紹介いたします。先人たちが好んで描いた動物たちの世界をご覧いただくとともに、私たち人間との深いつながりを再認識していただければ幸いです。