濃淡や階調、描線を駆使して生み出される水墨画には、無限の広がりが見られます。本展観は、時代や地域によって様々な表情を見せる水墨表現の広がりをご覧頂くものです。禅僧の余技として描かれ始めた水墨画は、中国絵画を手本としつつも、画家自身のを創意工夫を加えながら、次第に日本的な水墨画が描かれるようになりました。初期水墨画を代表する可翁 (かおう) が描いた「竹雀 (ちくじゃく) 図」、湿潤な大気が覆う雄大な山水を巧みに表した伝周文 (しゅうぶん) 筆「山水図屏風」、大画面に激しく流れ落ちる滝を描いた伝狩野元信 (かのうもとのぶ) 筆「瀑布 (ばくふ) 図」、大胆な構図が魅力的な雪村 (せっそん) 筆「呂洞賓 (りょどうひん) 図」をはじめ、当館のコレクションからもそれぞれの個性をうかがうことが出来ます。
本展観では当館所蔵の中世水墨画に加え、九州国立博物館に所蔵される国宝「周茂叔愛蓮 (しゅうもしゅくあいれん) 図」(狩野正信 (かのうまさのぶ) 筆)・「百衣観音 (ひゃくえかんのん) 図」・「山水図巻」(伝小栗宗湛 (おぐりそうたん) 筆) が特別出陳されます。画壇の頂点を極めた狩野派の祖、正信筆とされる「周茂叔愛蓮図」は、中国・北宋の文人、周茂叔にまつわる故事を絵画化したものです。樹木に見られる透明感あふれる淡彩が、画面全体に爽やかな印象を与えます。
この他、中国・朝鮮絵画や富岡鉄斎 (とみおかてっさい) の作品から、当館を代表する水墨画の作例を展示します。時代を超えて人々に愛され続ける、水墨画の幽玄な世界をお楽しみ下さい。