佐野市で実施する「田中正造翁没後百年顕彰事業」の一環として開催する展覧会です。
平成25年は、田中正造が亡くなってから100年となる節目の年です。田中正造は、公害の原点とされる足尾鉱毒問題の解決にその生涯をかけて取り組んだ、佐野市が誇る「郷土の偉人」です。 佐野市では、没後100年にあたり、正造翁の偉業を広く顕彰し、永く後世に伝えるため、全市、全庁をあげてさまざまな顕彰事業に取り組んでいます。
佐野市立吉澤記念美術館では、《原爆の図》で知られる画家、丸木位里・俊の晩年の作品「足尾鉱毒の図」(太田市所蔵)や木版画家・小口一郎が鉱毒事件を追った連作「野に叫ぶ人々」など、田中正造を主題とした美術作品を展示します。作品を鑑賞することで鉱毒被害に直面した人々の苦しみに思いを寄せる機会となれば幸いです。また、渡良瀬川流域在住の現代作家の作品も紹介し、正造の思想と取組みが、日本が繰り返し直面してきた問題を考える際に参照され続け、現在に至るまで大きな意味を持つものであることを確認します。
なお、正造は幼い頃に墨竹を当地・葛生の吉澤松堂に学んでいるほか、明治の重要な歴史画家・小堀鞆音との交わりなど、郷土の絵画史との接点も少なくなくありません。関連作品・資料を紹介し、田中正造の思想の背景にある地域性を掘り起こしたいと思います。
美術という切り口から、近年その重要性が増す田中正造の思想に、より多くの方々に触れていただく機会となれば幸いです。