熊田千佳慕(1911-)は、二本松ゆかりで横浜市出身の童画家です。戦後日本を代表する絵本作家の一人として、イタリア、ボローニャ国際絵本展に招待出品し、小学館絵画賞を受けるなど、近年その特異な画風が注目されています。
幼少の頃、ファーブル昆虫記の世界に魅せられ、卒寿をこえた現在もひたすら虫や花の世界を精魂込めて緻密に描いていく姿は、まるでファーブルその人の禁欲的な求道精神を体現するかのようです。
『ふしぎの国のアリス』『ピノキオ』『みつばちマーヤ』そして『日本の虫たち』…。だれでも一度は目にしたことのあるなつかしい絵本の世界を、この展覧会を通してあらためて見直すとともに、自然のいとなみの豊かさを気づかせてくれる画家のあたたかいまなざしをも感じ取っていただければさいわいです。