アントワーヌ・プーペル氏は、パリを拠点にして旺盛な作家活動を展開しています。彼の表現は、単なる「写真」を大きく越えるもので、1980年代から現在までの軌跡はヨーロッパで高い評価を得ています。
80年代後半に始まる「肖像」のシリーズは、モノタイプという特殊技法を使って、移された人物の内面を視覚化しようとするものです。
一方、2001年に50周年を向かえたパリのキャバレー「クレイジー・ホース」の踊り子たちの舞台裏を即興的なまなざしで切り取った写真と、華麗な舞台を自在に切り取った写真には、パリという都市に渦巻く官能美がみごとに表現されています。
また最新のシリーズである「博物誌」は、花びらなどをカメラを使わずにダイレクトにスキャニングをして、それをさらにコンピューター加工して、自然の官能的で幻想的な造形を創造しています。
プーペルは、20世紀に花開いた写真という表現のメディアが、21世紀に向かってさらなる創造するメディアであることを示しています。