絵本の絵は、私たちが最初に出会う絵画です。絵本は、物語と絵、つまり文学と美術が共に響き合い、協力することで成立します。絵本の絵は、物語を視覚的に伝える役目を持っていますが、この「伝える」機能は、絵本本来の重要な機能です。現代の美術においては、半ば失われつつあるこの機能を、絵本の絵は、常に新鮮な感動をもって私たちに伝えてくれます。絵本は、伝える、物語る、絵画の本来的な性質が現代において充分に発揮される場でもあるのです。そこでこの展覧会を「はじめての美術 絵本原画の世界」展と名づけました。本展では、絵本の原画に美術の観点からのアプローチを試みるとともに、絵画の伝える力、物語る力に改めて目を向けたいと思います。なお、この展覧会を構成する作品の多くは、1956年に福音館書店から創刊され、戦後の絵本史上高い評価を受けている『こどものとも』シリーズの元画(宮城県美術館所蔵)からなるものです。