受賞作の『AFRIKA WAR JOURNAL』は、コンゴ、リベリア、ブルンジなどアフリカ7ヵ国の紛争地に8年間通い続け、生と死の狭間で生きている人間の生々しい姿を描き出したモノクロ作品。
生きる場が「戦場」 となっている人間の無力を捉えた作品は、ひとの「尊厳」を見事に描き出し、従来の紛争地でのドキュメント写真とは一線を画した方向性を示している。
土門拳賞受賞のことば
紛争地
人の優しさに感謝
日本ではほとんど語られることがない。第二次世界大戦後、一地域に起きた紛争では最大といわれる犠牲者(推計500万人以上)を出し、今も増え続けているコンゴ民主共和国。コンゴ東部ではベルギーによる植民地時代から、金やダイヤモンド、近年ではコンピューターや携帯電話などに不可欠な希少金属の採掘を巡る争いが連綿と続いている。
為政者が利益の独占、支配体制維持のためにあおった民族対立の、憎悪と暴力の連鎖に住民たちは組み込まれている。
現在、国連最大規模の平和維持軍がコンゴ東部に展開しているが、武装集団と統制を失った政府軍による住民への暴力がやむことはない。
不条理で受け入れ難い状況の中、見知らぬ僕を受け入れてくれた人々に感謝したい。彼らの優しさがなければ決して撮影はできなかった。
写真を通じて誰にも知られることもなく葬られ続ける生命の断片に気づいてくれたらうれしい。