美術作品を見るということ,そして,美術館がどのように作品を提示するかをあらためて考えようとする展覧会です。
抽象的な作品を「何を表しているかわからない」と言って敬遠する人は少なくありません。けれども,何か作品を見て「わかった」と思った時にその「わかった」こととは何であるのでしょうか。りんごが描いてある絵を見て「りんごの絵だ」といったところで,それが「わかった」ということにはならないでしょう。一方「わからない」と感じた時にも,人は何かを感じているはずであり,この展覧会は,そのわずかなきっかけを大切にして作品と関わってもらおうとする展覧会です。見て,たやすく何が描いてあるのか「わかった」と思って通り過ぎてしまうよりも,「わからない」と感じた時にこそ,作品とそれを前にした人との間に様々な関わり方が生まれるはずです。「わからない」ということをポジティブに捉え,「わからない」からこそ始まる美術作品との関わり方を,見る人と一緒に探っていこうという展覧会です。