当館では2005年以来、コレクション展に展示された作品の前で、活躍中のアーティスト本人に自作について語っていただく「アーティスト・トーク」を開催してきました。この催しはこれまでに30回を数えます。そもそも、現代の作品に接するための親しみやすい導入になることを期待して始められた催しでしたが、事実、それぞれのトークでは、作者のそれまでの歩みや、そのときに考えていたことなどがわかりやすく語られており、理解を深める上で貴重な機会となっています。そしてこれらのトークを収録した映像は、長い目で見れば歴史的証言にもなっていくに違いありません。
このたびの展示では、これまでのさまざまな分野のトークの中から、とくに絵画に焦点をあて、トークのダイジェスト映像と当館コレクションの作品約40点とをあわせてご紹介します。登場する画家たちはいずれも、1970年代末から80年代にかけて発表を始めていますが、それはまさに、ミニマル・アートやコンセプチュアル・アートといった、従来の美術のあり方を厳しく問い直そうとする動向の後を受けた、難しい時期に当たります。表現が極限まで切り詰められ、「見ること」「作ること」を根本から捉え直さなければならなかった状況から、彼らは絵画の豊かな可能性をどのようにして取り戻していったのか。そうした課題の追求の成果が、彼らのトークや作品から感じ取れることでしょう。