フランス文学者の鹿島茂氏は、フランスの文学や歴史、また日仏の文化に関する幅広い執筆活動のみならず、約5万冊という膨大な数の西洋古書・版画を所蔵するコレクターとしても知られています。本展は、鹿島氏愛蔵のコレクションより、20世紀初頭のフランスで活躍した2人のイラストレーター、ジョルジュ・バルビエ(George Barbier, 1882-1932)とジャン=エミール・ラブルール(Jean-Émile Laboureur, 1877-1943)を紹介するものです。
二つの大戦間にあたる1920年代、フランスはバブル景気に沸き、モードや建築、出版業界に華やいだ空気が広がります。「アール・デコ」と呼ばれるこのモダンな時代の美をヴィヴィッドに映し出した分野の一つがグラフィック・アートでした。そのイラストレーターの中で、今回ご紹介するバルビエは、モード雑誌や文学の挿絵、舞台装飾まで手がけ、優美な色彩により一世を風靡、一方のラブルールは、都会の風景や人間像をシャープな線描によってクールでドライに描いて人気を博しました。
対照的なスタイルの両者ですが、実はどちらもフランス西部の町ナントに生まれ、同地の慧眼なる共通のコレクターに見出されて才能を開花させた、アール・デコのモダンを語る上で欠かせない芸術家であったということが、本展を通してご覧頂けることでしょう。
バルビエのファッション・プレートや豪華挿絵本、ラブルールの版画作品や挿絵本、あわせて約120点をご紹介する本展により、グラフィック・アートの黄金時代をどうぞご堪能ください。