「自分の絵は、人の世の旅路に、たとへば、胸に挿むだ心の花から花弁(はなびら)を一つ一つ路へ捨ててはゆく――その花弁だ。(中略)もし間違(まちが)へて、紅い花弁のかはりに、自分の心臓(はあと)の砕片(かけら)を落しでもしよふものなら……………それでも構はない。絵は、僕の命だもの。」(『夢二画集 夏の巻』序より)
竹久夢二(1884~1934)は、日記や手紙、著作の序文や随筆に、折々に絵についての考えや、時々の興味関心、起こった出来事に対する雑感などを綴っています。
こうした、夢二の遺した言葉の断片――例えば日記であれば日常の心の動きのあらわれであり、また著作の序文ならば読者に向けた考えの表明といえるでしょう――を集めてみれば、夢二独特の作品世界の背景にある、ものの見方や考え方が浮かびあがってくるのではないでしょうか。「人生と芸術」「男性と女性」「子どもと故郷(ふるさと)」という3つのテーマのもと、言葉と作品から人間「夢二」の姿に迫ります。
今年の秋頃には、詩や句や短歌といった、夢二のもう一つの言葉の世界をご紹介する予定です。