江戸時代中期の18世紀、伊藤若冲や曾我蕭白、池大雅などが個性をふるった京都画壇で圧倒的な人気を博していたのが円山応挙です。「写生」を基本とした応挙の絵は誰にでもわかりやすく、画題への知識や文人的な教養なしでも楽しめるという新しさがありました。けれども応挙の作品は平明な写生にとどまるものではなく、障壁画や屏風絵において部屋や画面の形を絵の空間表現に利用したトリックアート的着想や、大胆・軽妙に筆を操りながらリアルさを感じさせる驚異的な技量など、多くの革新と魅力に満ちています。
本展では、国宝・重要文化財や展覧会初公開作品を含む代表作をご紹介するとともに、西洋の遠近法を用いた若年期の「眼鏡絵」制作や中国絵画の学習、後世への影響など、様々な角度から応挙の実像を再考します。障壁画では大乗寺客殿の空間を再現し、自然光のように変化する照明で応挙の意図をご体感いただきます。日本・中国・西洋の絵画を吸収して完璧な様式美をつくりあげ、近代日本画を準備した真の実力者、応挙の芸術をご堪能ください。