「現代美術」とは何でしょうか?
よく言われるのが、現代美術は、"よくわからない""難しい″ということです。そして、とても大まかな捉え方ですが、美術作品を見て美しさを感じるというビジュアルな感覚だけでなく、メッセージを込めて考えさせるようなコンセプト性の強い作品や、思想やコミュニケーションの側面を共有するような作品が、「現代美術」と呼ばれます。
「現代美術」は、単に"今の時代に作られている″だけでなく、"現代という時代の思潮や文化を強く反映した″美術であり、実は、いつの時代にも、現代美術はあったのです。
オクヤナオミは、石川県出身、小松高等学校卒業後、美川海岸で疎開中の宮本三郎との出会いをきっかけに、宮本が講師となった金沢美術工芸専門学校(現・金沢美術工芸大学、のち教授)の第一期生として入学。その後も家族ぐるみの付き合いをするなど、宮本と師弟の関わりをもってきた方です。1965年(36歳)よリフランス・パリに移住、1982年までを過ごし、西洋の美術史と当時の美術界に生で触れ、概念と感性を研澄させました。一貫して、数学や言語を取り入れたコンセプト性の強い作品を手掛け、パリ青年ビエンナーレ展やヨーロッパ各国の国際美術展、版画展に出品。帰国してからは、既成の価値観やタブーを破り、新しい表現を求め活躍した歴史上多くの芸術家たちに対するオマージュ的な作品も発表しています。
一方、師の宮本三郎は、1950年代後半、フランスを中心に西欧全土に広がったアンフォルメル運動、これに対峙するアメリカの抽象表現主義・アクション・ペインティングの抽象絵画一辺倒の中で、具象画家として苦悩します。1960年代中頃まで、作品に苦渋の痕跡が読み取れますが、次第に自身のリアリズムを見出し、見事に順応します。
この企画展では、宮本三郎のアンフォルメル期の作品とオクヤナオミの近作、それぞれにとっての"現代美術″を紹介します。現代美術は難しいといわれながらも、ちょっとしたヒントで面白いものにかわります。そういった楽しさを感じていただければ幸いです。