類いない存在感!国内外のカルチャーシーンに特別の影響を与えてきた横尾忠則によるブックデザインは、いずれもひと目でそれと分かるアウラを放っている。真に創造的な力のなせるわざだろう。その魅力の原点は、書物に固有の触感と空間の流れを認識しながらも、常識的なデザイン語法に反旗をひるがえす独自の方法論にある。また、横尾の造本術、とりわけ挿絵入り本におけるテキストと美術世界との変幻自在なコラボレーションは、江戸時代の草双紙などがそなえていたふたつの間の、たくまざる阿吽(あうん)の呼吸をほうふつとさせる。天性の才人が折りに触れて手がけ、時代を挑発しつつ鮮烈に刻印し、旋風を巻き起してきた造本および雑誌デザインと初めてまとまったかたちで出会えることを何よりも喜びたい。
臼田捷治(現代装丁史研究者)