■薗部雄作の世界 宝木範義
薗部雄作は、坂崎乙郎が紀伊國屋画廊の企画を手がけた、1970年代から80年代にかけて、再三展覧会の機会を得ている。幻想評論家と呼ばれた坂崎だが、戦後すぐのドイツに留学した美術研究家だけに、実は抽象絵画にも造詣が深かった。薗部雄作は当時この人物の批評眼にかなった、数少ない抽象画家のひとりだったのである。
たとえば「建築的なもの」、「同化するもの」などを見ると、理知と情念が深く絡まりあい、共生することで、ひとつの空間が獲得されているのを実感できる。だからこそ私たちはそこに抽象なるものの画一化を越えて、吹き抜ける一陣の風さえ感じるのだ。薗部雄作の画面(そして著作もまた)は、外見こそ穏やかながら、精神の核心において強靭さを飼いならしたその人となりを映し出すが、同時にまた筆者は、この間の歳月を顧みていささかの感慨に打たれる。