上村松篁(うえむらしょうこう)(1902-2001)は日本画家上村松園(しょうえん)の長男として京都に生まれました。京都市立美術工芸学校、京都市立絵画専門学校で学び、26歳の若さで帝展特選に輝くなど官展で頭角を現しますが、昭和23年(1948)に世界性に立脚する日本絵画の創造をめざして日展を離脱、山本丘人(きゅうじん)、秋野不矩(ふく)らと創造美術(現・創画会)を結成し、その中心的存在として活躍します。幼い頃から鳥や花に親しんだ松篁は、透徹した自然観照と時代をとらえる鋭い感性によって伝統的な花鳥画に新風を吹き込み、昭和59年には文化勲章を受章しています。
生誕110年を記念する本展では、鷺の若鳥を題材に洗練された造形感覚を示した「星五位」(ほしごい)や、熱帯への憧れを託した「燦雨」(さんう)など、初期から晩年に至る代表作を中心に約60点を展示しその画業の全容に迫ります。中でも奈良朝の風俗を豪華絢爛に描いた幅7.6mの大作「万葉の春」は、画家の人物画における秀でた側面を知る絶好の機会となることでしょう。秋の深まりゆくひととき、清らかな余韻にあふれる松篁の絵画世界をお楽しみください。