横浜美術館コレクション展2012年度第3期のテーマは、「光」。
光は、視覚世界の認識に深く結びついた根源的な存在であり、美術において不可欠な要素です。強い光、微かな光明、空間全体を包み込む淡い光など光の在り方は多種多様、照らす光が強いほど深い闇がもたらされ、光明と明暗の対比が生み出されますし、光は希望や憧れ、覚醒などさまざまな象徴性を導きます。本展では、コレクションから光にちなむ表現を採りあげます。
ガラスの作品は、光があたることによって見え方や表情を変化させ、光そのものを取り込んで表現を完結させます。スタジオ・グラス運動は、作家自らが工房でガラスを自由に造形することによって、ガラス表現の可能性を拡げましたが、今期は、スタジオ・グラスで生み出された作品の魅力とその多彩さをまとめてご紹介します。
西洋美術は、明暗法を産み出し、また光に神や聖なるものを象徴させるなど、常に光の表現と深く関わって展開してきました。マチス、ルオーらの師であったギュスターヴ・モローの《岩の上の女神》には、精緻な筆遣いと神秘的な色彩で、女神の光り輝く様を見ることができます。またサルバドール・ダリの三連作《幻想的風景:暁、英雄的正午、夕べ》には、1日のうちで変化する太陽の光が描き込まれています。
また日本画においては、画材の特色を活かした繊細な表現で、仏画にみられる光背、火炎が放つ光、月明かりなど、さまざまな光が表されています。光を受けて輝く金地や、画面全体に柔らかい光をもたらす裏箔など、西洋美術とは異なる技法であらわされた光の扱いをご覧いただきます。
写真展示室は、光の表現とは別に、「生誕100年キャパ、知られざる実像」展の関連展示として、報道写真を紹介します。今年度コレクション・フレンズ対象の映像作品、森村泰昌《なにものかへのレクイエム(人間は悲しいくらいにむなしい)1920.5.5-2007.3.2》は、写真展示室で展示します。