石内都は1979年に木村伊兵衛写真賞を受賞、2005年には母親の遺品を撮影した「Mother's」でヴェネツィア・ビエンナーレの日本代表となるなど、現在まで意欲的に撮り続けている写真家です。石内は「Mother's」に続く、広島の被爆資料のワンピースなどを撮った「ひろしま」を制作する過程で多くの絹織物に接したことにより、絹への関心を呼び起こされました。さらに6歳までを過ごした群馬県桐生市が織物の産地であることから、2010年より絹を題材として銘仙や繭、織物工場、製糸工場などの撮影を始めます。明治・大正・昭和にかけて流行し、絹を着る喜びに満ち、生き生きとファッションを楽しむ当時の女性たちを垣間見せるような銘仙、そして日本を支えてきた生糸産業の現況を踏まえ、石内の目は様々な過去と現実を織り込みながら、なお美しく色あせずに現存する近代日本の夢の跡形として絹を捉えました。撮りおろし新作の「絹の夢」は、石内の個人史と近現代史が交差した新たな展開となります。日本初展示の「ひろしま」を含む新作46点と映像作品を展示します。