大きな自然の脅威や人的な破壊を契機とする社会構造の転換へ向けた動き、身近なところではコミュニケーション方法の劇的な変化など、今は、マクロな観点においてもミクロな観点においても、世界の大きな変化の波の中にいます。この激流の中で私たちは、どのような選択のある未来へと舵をとっていくのでしょうか。呼吸であったり感情を抱くという変わらないものと、変わりゆく世界の中で、どのように世界と対峙し、世界の中での自分の位置を確認しえるのか、この問いに対して、様々なアプローチをもって試みる実験を行います。
通常“ハード”とは物理的な設備や施設を指しますが、石澤は、人間がつくり出すあらゆるものを“ハード”、自然を“ソフト”と捉え、その関係性や境界線、バランスを探る作品を制作しています。日本で初の展示となる石澤は、社会に対する独自の視点の中にユーモラスを交えた新作を発表します。
八木は、「そこに存在しながら意識されないもの」をテーマに幅広い手法で作品を制作しています。わたしたちを取り巻く空間、立体物を認識するために、無意識に行う「見る」行為の意識を顕在化する、赤色と青色で作る3次元画像の仕組みを3次元である立体に発展させた新作を発表します。
作品制作を通じ人の行動の背後にあるものを意識的に実践するpippiは、マスキングや型を使用したペインティングや手芸の技法を用いた作品を制作しています。サウンドアーティストの田中真由美と共同でつくる新作では、「全てを受け入れる」ことを意識的に行うプログレスを、色と音のインスタレーションとして発表します。
視覚のみならず、聴覚を含めすべての身体感覚にアプローチする作品を通し、今わたしたちを取り巻く思考や生活、社会、世界がどのようにして形作られているのか、という身近で壮大な問いに思いを巡らす契機となれば幸いです。