20世紀は歴史上初めて一般市民を大量に殺戮する戦略爆撃が行われ、人類史上前例のないほどの悲惨な都市の破壊が重ねられました。
当館にはこのような戦争の悲劇を告発するすぐれた作品が収蔵されています。パブロ・ピカソがスペイン内戦におけるゲルニカでの1937年の爆撃を世界に告発するために制作した絵画《ゲルニカ》のタピスリ、1940年5月にドイツ軍がオランダの港湾都市ロッテルダム中心部を爆撃によって破壊した悲劇を語るオシップ・ザッキン作《破壊された都市》、1940-41年にかけてドイツ軍が行った空襲のため地下鉄構内に避難したロンドン市民の姿と結び付くヘンリー・ムーアの《奉献(三人の女性と子供)》、泥沼化した太平洋戦争末期の1945年3月10日に行われた東京大空襲の悪夢のような記憶に対峙する井上有一《東京大空襲》連作と《噫(ああ)横川國民學校》などです。これらの作品群は個々の歴史的事実を超越した、巨大な戦争の力に立ち向かう人間の叫び、あるいは祈りともいうべき表現に昇華しているといえるでしょう。本展覧会ではこれらの所蔵作品を中心とし、さらに当館にその一部をご寄託いただいている故砂盃富男氏(1930-2001)のコレクションより戦争について深く考察した作品群も加えて、戦争と平和というテーマのもと展示いたします。