JR静岡駅前にある静岡市美術館は、誰もが気軽に立ち寄れる“街のなかの広場”のような美術館を目指しています。Shizubi Projectでは、多くの人が行きかうエントランスホール・多目的室の開放的な空間を活かして、現代のさまざまな美術の姿をご紹介します。
昨年に続く第2回は、展示室での「フィンランドのくらしとデザイン―ムーミンが住む森の生活」展(9/1~10/8)にあわせ、近年フィンランドの芸術家村フィスカルスで、滞在制作の経験もある彫刻家・小林且典(1961-)を取り上げます。
小林は、東京芸術大学で彫刻を学びイタリアに留学しました。当初、もの派やアルテ・ポーヴェラ以降の時代の流れを踏まえた構成的な作品で注目を集めましたが、次第にそういった潮流から距離を置くようになります。特にイタリアで出合った伝統的な蝋型鋳造の技法に魅せられ、帰国後、個人のアトリエでも鋳造出来るよう改良を重ねて制作を続けてきました。
瓶や壺、大地に生える木々の姿など、慌ただしい時の流れの外にひっそりとたたずむ、手のひらに乗るような“静物・風景彫刻”―小林はまた、自身の彫刻作品を自作レンズで撮影した独特の写真作品でも知られています。
今回は、2010年のフィスカルス滞在を機に北欧的なカタチも加わった、そんな小林の“ひそやかな眼差し”の世界をご紹介します。