米国写真界の巨星、エドワード・スタイケン(1879-1973)。20世紀初頭にきわめた優雅なピクトリアリズム(絵画主義)の作品から、冷戦期にニューヨーク近代美術館の写真部長として900万人を動員した大型写真展「ザ・ファミリー・オブ・マン」の企画まで、写真の力を徹底的に引き出そうとするその活動は約70年に及びました。本展では、彼が1920-30年代の商業写真界にもたらした、明快なモダニズムのファッションとポートレート写真を約200点、一堂に紹介します。
1923年、スタイケンは高級ファッション誌『ヴォーグ』や総合誌『ヴァニティ・フェア』を出版するコンデ・ナスト社の主任写真家になります。戦間期の米国社会は光と影が激しく交錯する舞台であり、スタイケンは人々の憧れと消費をいざなう虚構の世界を精緻に撮り続けました。シャネル、ランバン、スキャパレリら一流デザイナーの魅惑的なドレスから、女優グレタ・ガルボや作曲家ジョージ・ガーシュインらの忘れがたい表情まで、本展はスタイケン流のモダンなスタイルが発展する過程を追いながら、その背後で移ろいゆく時代を肌で感じる機会となるでしょう。
本展は2007年パリのジュ・ド・ポーム国立美術館を皮切りに世界各地を巡回し、わが国には奇しくも作家没後40年という節目に上陸します。