西湖山龍雲寺は、今から約七〇〇年前に光厳天皇の皇太子木寺宮康仁親王が開基となった臨済宗妙心寺派の古刹です。木寺宮家は元亀三年(一五七二)三方ヶ原の戦いで武田方についたため、天正八年(一五八〇)に家康の軍勢に攻められ、堂宇のほとんどを失いました。しばらくは寺の復興もままならない時代が続きましたが、元禄時代になり中興開山鳳髄丹和尚が龍雲寺を再興し、今日に至っています。
今回の展覧会では、徳川家康判物や龍雲寺ゆかりの白隠慧鶴ら名僧の墨蹟を数多く展示致します。特に白隠の機知に富んだ禅画や中興開山の六十五回忌に対し同寺が招聘した東嶺円慈の一連の書画は、大変見ごたえのあるものです。また俯瞰的に我が国の禅宗美術を概観していただくため、当館所蔵の風外慧薫「半身達磨図」や隠元隆琦「示偈七言四句」、徳力富吉郎「十牛図」なども併せて展示いたします。
禅の精神は、茶道や華道から武士道などに至るまで日本文化の底流を力強く形成しています。佐鳴湖湖畔に位置する名刹 龍雲寺の名宝を通じ、その心を感じていただければ幸甚です。