山陰・鳥取の山陰地方は民藝運動が活発に行われ、全国的に注目される地域の一つです。
これは民芸の関係者が多く訪れ、その指導のもとに育まれた優れた手仕事の伝統が、ながく受け継がれている証でもあります。民芸とは、大正15年柳宗悦、河井寬次郎、浜田庄司の三人の創始者によって生み出された美の考えで、高級な個人的美術ではなく、名もない工人達が作る実用的工芸品に美しさを見出し、「民衆的工芸」を略称して「民芸」という言葉が作られました。したがって、民芸品となるのは実用品で、「用の美」「無銘」「手仕事」などの要件を備えたものであり、そこには「健康な美」が宿っているのです。
この考えは、柳宗悦らの講演会や民芸品の発掘活動などにより<民芸運動>として全国に浸透し、各地に民芸協会や民芸館が作られました。島根県では、昭和6年柳宗悦による「島根工芸診察」と称した民芸発掘の旅が津和野から安来にかけて行われ、県下の優れた民芸品が選ばれました。翌7年5月浜田庄司を迎えて「島根民藝会」が発足し、その民芸運動の歴史は80周年を迎えます。この展覧会では、見直されつつある民芸運動についてその活動を振り返り、山陰の民芸の魅力を紹介、発信する機会とします。