パウル・クレー(1879-1940)は、生涯を通じて多くの旅から霊感を汲みあげ、独自の魅力的な世界を築きました。彼の造形に大きな影響を与えた旅としては、1914年のチュニジア旅行と1928-29年のエジプト旅行がよく知られています。しかし、クレーは単なる旅の風景画家ではなく、旅の経験を絶えず内面化し普遍的なものに昇華させ、そこに新たな造形表現を見出してきたのです。こうなれば、クレーはつねに精神の旅を続けたといえますが、それは現実世界をも超えて異文化や異空間にまで広がるものでした。
今回の展覧会は、前述以外の旅にも焦点を当て、旅の記録ともいえる写真などの資料も展示して、クレーの内面化された精神の記録を読み解こうとするものです。本展覧会はクレー家とクレー財団の全面協力の下に、世界各国から集めた約150点によって6つのテーマで紹介します。
Ⅰ 1913年まで
Ⅱ 1914-20 チュニジア
Ⅲ 1921-26 東方への憧憬と想像の世界
Ⅳ 1923/27-33 旅の印象
Ⅴ 1926-31/33 エジプト
Ⅵ 1933-40 亡命と内面への旅