夫・丸木位里との共同制作〈原爆の図〉で知られる丸木俊(1912~2000)は、絵本作家としても活躍し、生涯に150冊を超える絵本や挿絵、装丁の仕事を手がけ、高い評価を受けています。本展は、生誕100年を記念し、丸木俊の世界を絵本原画を中心にご紹介します。
北海道秩父別に生まれた俊は、旭川高等女学校から東京女子美術学校(現女子美術大学)に進み、洋画を学びました。卒業後モスクワや南洋パラオを訪れ、二科展などに出品しています。広島出身の丸木位里と結婚し、原爆投下直後の広島を訪れ、後に彼とともに代表作〈原爆の図〉を完成させます。
一方、絵本制作の活動は、南洋での体験を生かした『ヤシノ木ノ下』(1942年)の刊行から始まります。戦後は世界や日本の民話を題材にした絵本を数多く制作し、1971年にブラティスラヴァ国際絵本原画展でゴールデンアップル賞を受賞、1980年代には『ひろしまのピカ』を始めとする記録絵本シリーズにより、絵本にっぽん大賞等数々の賞を受賞しました。
俊の絵本は繊細な線描や色鮮やかな点描、水墨の滲みやぼかしを生かした水彩表現と、多彩な作風で独自の創作世界を展開しています。時に切ないまでに美しい画面の中に、命あるものに寄せる俊のまなざしを感じることができます。
本展では、丸木俊の初期から晩年までの絵本原画を中心に、油彩作品や丸木位里との共同制作「原爆の図」、丸木俊の制作活動にも影響を与えた姑丸木スマの天真爛漫な作品も併せて展示します。絵本制作を通して彼女が何を見つめ、表現したのか展観いたします。