電線をくるくる巻くと磁石になるんだ―――。静岡の豊かな自然に囲まれた生活の中で、自然界の不思議に心惹かれ、自由闊達(かったつ)に育った伊藤少年は、子どもの時に大阪万博で見た太陽の塔に衝撃を受けます。「なんだこれは!」造形の力に圧倒された経験は、後に自然科学とアートという伊藤作品の二つの柱となりました。
常識を少し斜めからみた時の面白さ、当然のことを疑問に思う気持ち、それが伊藤尚未の原点であり、全ての作品に共通する魅力です。
螺旋(らせん)シリーズと呼ばれる作品は、「方向性のない球体に2つの方向性を持つ螺旋を組み合わせたら?」という好奇心から。光を用いた作品は、静物デッサンをしながら感じた「なぜ影を描かなくてはいけないんだ!ネガティブな!」という不満から、それぞれ生み出されました。
「クスッ」と笑えて、「へーェ」と言える。私たちの日常のものの見方を少し変えて見せてくれる伊藤尚未の作品は、体験しなければ魅力が伝わらないものばかりです。現代アート初心者の方も、どうぞお気軽にご覧ください。