契丹[遼]は今からおよそ1100年前、遊牧系民族が中国北方の草原に樹立した広大な帝国です。唐の滅亡後、916年に国号を「契丹」と定め、遊牧と農耕を中心としながら諸民族と活発な交流を保ち、200年にわたって豊かな国家を形成しました。
ところが契丹は自国で編集した歴史書や周辺国による関連史料も乏しいため、長らく草原に消えた「まぼろしの国」となっていました。
近年、契丹の領域における学術調査が進められたことにより、契丹王族の墓や仏教寺院の遺跡などの新発見が相次ぎ、その繁栄と文化レベルの高さを具体的に示す品々が、長い眠りから覚めつつあります。
黄金の仮面や腕輪、銀の宝冠や靴。銀に玉石をあしらった馬具。シルクロードを経て運ばれた西方のガラス器、瑪瑙・トルコ石のネックレス。北宋よりもたらされた白磁器。今なお彩色をのこす壁画や板絵。さらには白大理石の仏像や銀の舎利塔など、それは1000年のタイムカプセルから取り出された、想像をはるかに越える豪華な美術作品でした。
本展では中国・内蒙古自治区で発見され、世界初公開を含む国家一級文物[中国の国宝]を中心とした貴重な作品約120件により、知られざる契丹の多彩な文化と美術をご紹介いたします。