山口聡一郎は、1980年代から夜の公園や高層ビル街、路面に沿った建物風景など何の変哲もない街頭風景を、光と影のコントラストを巧みにいかして撮る岡山市在住の写真家です。岡山東部の農村風景を、独特のアングルで切り取った写真からは、田園地域の人々の素朴な営みが伝わってきます。本展は、奈義町内の各所を、車の窓越しに撮った作品で構成します。普段見過ごしていた奈義の田園は、あたかも時間が停止した異国の風景のように、抒情的な深みのある写真となって私たちの目の前に迫って来ます。山口が独自の視点で切り取った山村風景は、日々変貌する煌びやかな大都市を捉えた写真とは対照的に、普遍的な美しさや、穏やかな奈義の風土を静かに伝えてくれるでしょう。