現代ではインターネットが普及し、電子メールや各種コミュニケーションツールの発達により、早くて便利な情報のやりとりが可能となりましたが、手紙や葉書にはそれらには代えられない質感があります。そして美しい風景やモノを印刷した絵葉書には、今なお格別の趣があり、美的所有欲を満たすものも少なくありません。
近代日本の郵便制度は、鉄道と同様に明治初めにイギリスより導入され、それまでの飛脚に取って代わりました。その後、明治30年代に絵葉書の制作・使用が認められ、同35年の万国郵便連合加盟25年記念絵葉書や日露戦争の記念絵葉書発行を契機として、絵葉書を収集対象とするコレクターも増え、一大ブームが起こりました。
今回展示する資料は、主に鉄道会社等が制作したものや交通にまつわる図柄を扱った明治から昭和初期の絵葉書で、沿線各地の名所旧蹟や年中行事、路線開業の記念等様々な題材がモノクロや手彩色の写真・イラストで美しく印刷されています。アール・ヌーボー風のデザインや、エンボス加工等興味深い表現技法が駆使され、特に手彩色の絵葉書は、現在ではちょっと考えられないことですが、モノクロ写真に手作業で着色したもので、一枚一枚微妙に違いがあり、何ともいえない手作りの風合いを感じることができます。
小さな絵葉書に詰め込まれた美しい世界に浸り、懐かしい鉄道車輌や全国各地の名所旧跡、観光地をめぐる旅に出てみてはいかがでしょうか。