ピカソやダリとともにスペイン近代絵画を代表する巨匠画家、ジョアン・ミロ(1893-1983年)。カタルーニャ地方の大都市バルセロナに生まれたミロは、同地の美術学校を卒業後、病気や世間の無理解に苦しみながらも創作を続け、1919年以降はピカソやダダ、シュルレアリスムの作家たちと多く親交を結び、彼独特の抽象的表現に向かうようになります。90年に及んだ長い生涯のうちに、ミロは絵画や版画、壁画、彫刻、陶芸、舞台美術など、多くのフィールドにわたり膨大な数の作品を生み出しました。彼は故郷スペインのカタルーニャの明るい日差しと豊かな自然を生涯愛し続けたこともよく知られています。作品画面に繰り返し現れる太陽や月、星、鳥などのモチーフに共通するミロの色彩と線の躍動感は、カタルーニャの大地から創造のインスピレーションを得たものでした。ミロが本格的に版画の制作を開始したのは1928年、彼が35歳の時です。様々な技法を複雑に併用して創られた版画作品群は独特の存在感を放っています。絵画と並んで版画制作はミロのライフワークとなり、晩年に至るまでに約2500点の版画作品を発表しています。本展覧会では、初めての版画作品《一羽の小さなカササギがいた》から晩年期のサッカー《ワールドカップ'82 スペイン》ポスター版画まで、ミロが生み出した膨大な版画作品から代表作145点をセレクトして、一同に展示いたします。高らかに生命の賛歌を詠い上げた、自由奔放なミロの線と色彩の世界をどうぞお楽しみください。